おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

マージェリー・アリンガム『窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿Ⅰ』(創元推理文庫/猪俣美江子訳)

 アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、ナイオ・マーシュと並び、ビッグ4と称されるマージェリー・アリンガムが創造した探偵アルバート・キャンピオンが活躍する日本オリジナル編纂短編集。

収録作品

「ボーダーライン事件」The Border-Line Case

「窓辺の老人」The Case of the Old Man in the window

「懐かしの我が家」The Case of the Pro and the Con

「怪盗〈疑問符〉」The Case of the Question Mark

「未亡人」The Case of the Widow

「行動の意味」The Meaning of the Act

犬の日」The Dog Day

「我が友、キャンピオン氏」(エッセイ)My Friend Mr. Campion

 名前は知っているものの、アリンガム作品は今回初めて読んだ。てっきり本格的な謎解き一辺倒の作家かと思っていたのだけれど、冒険小説的なものやオチでついフフッと笑ってしまう愉快なものまで、ミステリを基本としながらも結構幅広い味わいがあって楽しかった。若い医師が死亡を確認した老人が蘇って姿を現す「窓辺の老人」、夫婦を装った詐欺師が、平凡な家を高額で借り入れた胡散臭い謎を暴く「懐かしの我が家」が特にお気に入り。作者にとってアリンガムがどういった存在か、誕生する経緯が語られているエッセイ「我が友、キャンピオン氏」も読めてよかった。

 最近翻訳された『ファラデー家の殺人』も好評のようなので、そのうちに読みたい。