おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

アレイナ・アーカート『解剖学者と殺人鬼』(ハヤカワ・ミステリ文庫/青木創訳)

あらすじ 

 監察医のレンは、殺人事件の報告を受け現場である沼地に向かうと、そこには腹部を切り裂かれた女の死体が水に浸かっていた。そばにあった被害者の服とともにあったのは一冊のホラー小説。実はこの事件の二週間前にも、水たまりでずぶ濡れになった若い女の腐乱死体が見つかっており、その口の中には本のページが数枚押し込まれていた。同じような状況であることに不安を抱くレンは仕事仲間の刑事ジョンとともに事件を追ってゆく。

 一方、この猟奇的な殺人事件の犯人であるジェレミーは、週末に計画しているさらなる「狩り」を楽しみにしていた。

 監察医のヒロインの視点で語られる章と、殺人鬼の視点で語られる章が交互に描かれて物語が進行する作品。読みやすい語り口と、訳者あとがきを入れても三百ページちょっとという分量で一気に読め、尚且つジェレミーの視点ではサイコサスペンスとして、レンの視点からは(レン自身は刑事ではないが、仕事仲間の警察官と行動を共にしているため)警察捜査小説として面白かった。

 ある段階でレンに関する過去が明かされことで、より一層ジェレミーとの対決に読みごたえを感じさせる。だからこそ、ジェレミーが彼女に執着する根拠をもう少し強めに表現してもらいたかった。結末は「あぁ、そっちに持っていくか」という展開で、これはこれで良い幕引きだと思った。