収録作品
「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」
「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」
「動くはずのない死体」
「悪運が来たりて笛を吹く」
「ロックトルーム・ブギーマン」
どれ一つとして同じような話はなく、様々な趣向を凝らした本格ミステリ短編集でした。
お気に入りは「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」、「動くはずのない死体」、「ロックトルーム・ブギーマン」。
「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」は、2人の高校生が誤ってコーヒーをこぼしてしまったミステリ作家の原稿を推理によって復元してゆくお話。このシチュエーション、ロジカルに埋められてゆく原稿、とても楽しめました。
「動くはずのない死体」は、はずみで夫を殺してしまった妻が、目を離した隙にどう考えても夫の死体が動いたとしか思えない状況を考えるお話。不可解で魅力的な謎が、論理的に、尚且つあっと驚く手法で解決されてゆき、見事に騙されました。
「ロックトルーム・ブギーマン」は、どんな場所でも瞬間移動ができるブギーマンという種族が犯した密室殺人の謎を巡るお話。個人的にはこれがベストでした。前提として、この世界ではブギーマンの存在は認知されていません。一方、主人公の警官はブギーマンと人間のハーフであり、冒頭で犯人のブギーマンによって自分が犯人であること告げられています。特殊設定ミステリとしても楽しめますが、密室の謎、犯人がブギーマンであることという結論が出ているにもかかわらず、そこから解かれるべき謎の部分が生じ、論理的な展開が続いてゆくという、非常にオリジナリティーに溢れた本格ミステリです。
全体を通して唯一無二の味わいが楽しめる本格ミステリでとても面白かったです。