おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

有栖川有栖『46番目の密室』(講談社文庫)

 何故だか自分でもわからないが、社会人になってからミステリは翻訳ものを多く読むようになり、国内作家も読むには読んでいるが、学生の頃よく読んでいた綾辻行人有栖川有栖、法月倫太郎、二階堂黎人といった新本格作家はあまり手にしなくなっていた。しかし最近、無性にそのあたりの作家が恋しくなり、本棚の奥から色々と引っ張り出してきた。今回はその中から、火村英生シリーズの第一弾を選び、久しぶりの再読をした。

 犯人もトリックもストーリーもほとんど記憶に残っていなかったので初読の気分で楽しめた。

 これまで45もの密室トリックを発表してきた、密室の巨匠と謳われる推理作家真壁聖一。北軽井沢にある彼の別荘でおこなわれる毎年恒例のクリスマスパーティーに招待された作家や編集者たちは楽しいひと時を過ごしていた。しかしその別荘で殺人事件が発生してしまう。しかも死体のある部屋は密室状態であった。犯人はいかなる方法で密室殺人を遂げたのか。

 本書に限らず、新本格ミステリは謎解き要素に重きを置き、登場人物の心情やストーリー性はあまり深く堀り下げないことで、純粋に謎解きミステリを楽しむにはもってこいの作品。このシリーズは主人公格の二人(火村と有栖川)の人物造形が大好きなんですよね。お互いを信頼している感じが出ている二人の関係性が読んでいてほっとする。数あるバディものの中でも安心して読めるシリーズの一つ。

 今回は登場人物の多くが推理作家ということもあって、それぞれの作家独自のミステリ論が語られているのが興味深く読めた。〈天上の推理小説〉、いつか読んでみたいなぁ。

 

 ドラマ性のあるミステリも面白いし、こういった謎解き重視のミステリも面白い。これからも細かいジャンルにこだわらず、色々なミステリを読んでいきたいと改めて思った。とりあえずこのシリーズは定期的に読んでいこうかなぁ。次は『ダリの繭』か。持ってはいるけど読んではいない気がする。読むのが楽しみだ。