おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』(創元推理文庫)

 主人公の加茂冬馬は、肺病を患った妻が重篤な状態に陥り絶望していた。すると突然謎の声が聞こえ、妻を救うには彼女の祖先を襲った“死野の惨劇”を阻止する必要があるという。いわれるがままに2018年から1960年にタイムスリップした加茂は、妻の祖母の双子の姉・文香とともに死野の惨劇を防ぐべく奔走するが、次々と不可能殺人が起きてしまう。

 これは大変面白い本格ミステリだった。主な舞台が1960年の屋敷ということもあって、クラシカルな雰囲気もたまらなく良い。

 そして特徴的なのが、タイムトラベルを取り入れたSFミステリでもあるというところ。この設定を破綻することなく謎解きに生かされていて、終盤の真相解明シーンでは思わずニンマリとしてしまった。

 ミステリとして素晴らしいのはもちろん、ストーリーも感動的だった。瀕死の妻を救うため事件解決に奔走した加茂の最後の決断、そしてその後の世界。いやぁ、堪能しました。