おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

方丈貴恵『孤島の来訪者』(創元推理文庫)

 『時空旅行者の砂時計』に続く〈竜泉家の一族〉三部作の第二弾。

あらすじ

 今では無人島となっている幽世島(かくりよじま)では、45年前、島にいた13人もの人々が殺されるという凄惨な事件が起こっていた。その事件を題材にしたテレビ特番のロケを行うため、出演者やテレビクルーなどの男女9人が幽世島を訪れる。

 その中の一人である竜泉佑樹は、このロケを利用して幼馴染の復讐をするため、ロケ参加者の内の3人を殺害する計画を立てていたが、ターゲットの一人である海野が何者かに殺害されてしまう。自ら手を下すことに拘る竜泉は、探偵役となり犯人を捜し始める。

 タイムトラベルというSF設定を活かした前作も面白かったが、今回はそれを上回る完成度で、本格謎解きミステリの妙を味わうとともに、特殊設定ミステリの奥深さも感じられた良作だった。タイムトラベルという特殊設定を早々に明かす前作と違い、本書では中盤に至るまでどのような特殊設定が設けられているか分からない構造になっている。事件の謎解きの前提である特殊設定の正体が何なのかという謎すらも、しっかりと伏線が張られたミステリとして楽しめる趣向が素晴らしい。なので、本書を初めて読む方は、裏表紙や1ページ目のあらすじ紹介は絶対に読まないことをおすすめしたい。