おだやか読書日記

ミステリとかファンタジーとか

ジョン・バカン『三十九階段』(東京創元社)

あらすじ

 第一次世界大戦が目前に迫る英国。南アフリカから帰国した青年ハネーの前に謎のアメリカ人スカッダーが現れる。彼はあるスパイ組織によるギリシア首相カロリデス暗殺計画を知ってしまったとハネーに語ると、数日後、ハネーの部屋で何者かに殺されてしまう。警察から殺人の疑いをかけられると同時に、スパイ組織からも狙われることを恐れたハネーは、逃亡の旅に出ることを決意した。

 英国冒険小説の古典的名作が、エドワード・ゴーリーのイラストともに復刊!いつか読みたいと思っていた作品がこんな魅力的な形で復刊されたとなれば手に取らざるを得ないでしょう。

 結論から言うと、とにかくハネーの冒険譚が楽しい。道行く先で出会う人々がめちゃくちゃ良い人ばかりで、ハネーの強運に思わず笑ってしまうほど。そんな彼でもピンチがやってくることもあり、スパイ組織に監禁される場面なんかはハラハラさせられました。終盤では三十九階段というキーワードとスパイ組織との対決で一気に畳みかけます。

 そして本書の目玉であるゴーリーのイラスト。スパイ組織を巡る冒険譚とミステリアスなイラストがマッチして、ストーリーの魅力を一層引き立てています。

 解説によると、作者はハネーを相当気に入ったらしく、彼を主人公とした続編が多数出ているそうです。機会があればそちらも読んでみたい!東京創元社様、いかがでしょうか。